もうひとつの『池田屋』

 彦五郎は手早く羽織を脱いだ。手にしていた大刀の先に引っ掛けると、階段の上の方に徐ろに突き出した。日も暮れた宿屋の廊下。既に襲撃を察知し市次郎をピストルで撃って殺気立っている薩摩人達は、羽織を新手と勘違いして撃ちかけてき … 続きを読む もうひとつの『池田屋』