子燕の旅立ち

 よく通る商店街に、防犯カメラがついている。そこに去年燕が巣を作ったが、真下を人が通る場所である。頭上注意、と書かれたカラーコーンが置かれていた。雛が旅だった後、巣は奇麗に取り除かれ、鳥よけのトゲトゲした形のネットまで巻かれる万全の体制が取られた。

 と思いきや。ネットが上手く足場になって作りやすいとばかりに、そのトゲトゲの間に埋めこむように今年も巣が作られた。また注意を促すカラーコーンが置かれる。よく人が立ち止まってにこにこして見ているのを見かけた。自分もその中の一人である。

 八月に入って、親鳥が少し離れた箇所につけられたスポット照明の上に止まるようになる。その向かいにあるお店の看板のところに、オーナメントのように成長した子燕たちが並んでいた。飛び方を習っているのだろう。

その翌日も同じところに親も子も止まっていたが、ついに翌々日、親だけになって子供の姿はなかった。巣立っていったのだろう。

 子燕は季語にもなっているくらいで、古くから歌にも読まれてきた。育つのを楽しみにし、巣立つと少し寂しく、しかしまた嬉しくもなる。

 来年は果たして、同じ場所に巣が作られるのだろうか。それとも商店街の方で鳥よけネットを倍増させるのだろうか。糞害などの対策に追われる商店街の方には申し訳ないが、来年も元気な姿を見せて欲しい気もしている。

 

#prose

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