旅が好きだ。
誰かと旅するのも、ひとりで旅をするのも好きだ。
旅の何が好きかと言えば、自分の知らない町を知ることができることだ。
知らない町に知らない人がこんなにたくさん居て、生きている。
そう思えること自体が興味深い。
電車や飛行機で移動するだけでも、夜間に星のように散らばる家々の明かりを見るだけでもそう思う。
誰かの為につけられた軒先の明かりや、ベランダに置きっぱなしになった三輪車を見ると胸がきゅっとなるのだ。
旅で訪れる町は、どこか色が薄く見える。
それもまた、旅の醍醐味だと思っている。
薄くて目新しい。
そしてその場所に滞在する時間が伸びれば伸びるほど、色は濃くなっていく。
これは引っ越したばかりのときも同じだ。
住み始めた時と、住み慣れた時では見える景色が違う。
色濃くなり、自分の世界と同化していく。
特定の場所に住まずに旅しながら暮らしている人は、世界中が色濃く見えているのだろうか。
それとも、全てが目新しく見えるのだろうか。